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お菓子な国のマァム 8

キンコ〜ン・カンコ〜ン

次の朝、パイ達のクラスの女性担任が、教壇に立ち生徒達に言う。

「みなさん、今日から二週間、ハーバードクッキー大学から教員実習生が来られます。」

生徒達はざわざわ騒ぎ出した。

「ハーバードクッキー大学?超名門じゃん?」

「あったまいいんだなぁ。どんな人が来るんだろ?」

生徒達は興味津々だ。

「はいみなさん、静粛に!

それではどうぞ、お入り下さい!」

教室の入口からスーツを着た男性が堂々と胸を張り入ってきた。

顔はなんと、コウモリ顔。

そう、ギーガ人である。

生徒達は仰天し、一瞬静まり返った。

しかしピコラは一人席を立ち、叫ぶ。

「あっ!あの時のお兄さんだ!」

ギーガ青年はニコッと笑い、

「やあ、ピコラ君!

偶然だねえ!

キミのクラスだったのか?」

隣の席のパイはピコラに尋ねる。

「あの人、ピコラ君の知り合いなの?」

「そうさ!オレに勇気をくれた人なんだ!

顔はおっかないけれど、すごく優しいお兄さんなんだぜ!」

「ハハハ…。改めてみなさん、はじめまして。

ハーバードクッキー大学から教員実習生として来た、ワン・タンメンです。

もうお分かりかと思うけど、ボクはギーガ帝国から来た留学生です。」

「ギーガ人…。」

「本物のギーガ人だ…。」

生徒達はおっかなびっくりワン・タンメンに注目した。

「…ボク達ギーガ人って恐い顔をしてるだろう?

だけどね、中身はみんなと同じ、平和が大好きで争い事が大嫌いなんだよ。

ボクはね、この国と文化交流を通じて、もっと仲良しになれたらなと思ってるんだ。」

「文化交流?」

「ワン先生!文化交流って何ですか?」

生徒の一人が挙手して質問した。

ワン・タンメンはニヤッと笑って答えた。

「ボクの場合…

ダンスだよ!」

「ダ、ダンス?」

「そう。ボクがここにいる二週間の間に、キミ達にギーガ帝国で流行っているダンスを教えてあげよう。

そのかわりキミ達からもボクにショコラン王国で流行っている物を何か教えてくれよ?」

ピコラは立ち上がり嬉しそうに

「面白そうだ!教えて教えて!」

と叫ぶ。

パイも立ち上がり

「あたしもやってみたいな!ギーガ帝国のダンス!」

他の生徒達も

「オレも!」「あたしも!」「うわぁ、楽しそうだ!」

と大盛り上がり。

ワン・タンメンは嬉しそうに笑い、

「よしっ!じゃあ早速グラウンドへ集合!」

「はぁーいっ!」

女性担任は驚いた。

今まで自分のやってきた授業は退屈そうでつまらなさそうだった生徒達が、この実習生にかかると見違える様に生き生きとしだしたのだ。

この実習生には生徒達の心をとらえる才能がある、と少し嫉妬に似た感情を持った。

王宮の応接室…。

ネクタイを締めたバルディスが入ってきた。

「お待たせした、ナカソーネ首相。」

「おお、ご多忙の折、突然の来訪誠に失礼至します、バルディス王子…。

いや、バルディス・アレキサンダー・ド・ショコラン次期国王陛下!」

「いや…。こちらこそお待たせして申し訳ない。

少し寝不足でね…。」

バルディスは低血圧気味でそう答える。

「寝不足!?おお、それはお身体に差し支えまするな。

なにかお悩み事でも?

もしかすると国王就任に重圧でも…?」

バルディスはギクッとした。

(…まさか昨夜妹に迫られ、その後悶々として一睡も出来なかった、だなんて口が裂けても言えないよな…。)

「い、いや…。

我が国民の、ギーガ人に対する差別について、悩んでいたんだ…。」

バルディスはそう言って誤魔化した。

「おお、さすがは次期国王陛下!

良い所に目を付けられましたな!

それについては我々政府でも近々新政策を取り入れる所存でございまして…。」

「新政策…?具体的には?」

「はい。来年度より小中学校の教職員に、ギーガ人教諭を大量に採用する方針にございます。」

「…ほう。」

差別意識というのは、小中学生時代に根付く物だと考えられます。

その大切な時期に、ギーガ人教諭に教わり、育ててもらう事により、ギーガ人に対する誤解や思い込みを解き、信頼や尊敬を向上させる事が主な狙いです。」

「うむ、それは良い!

よし、早速進めてくれ!」

「ははーっ!」

「そう、そこでステップ・ステップ!

ワンツー・ワンツー!

…みんな、なかなか飲み込みが早いじゃないか!」

「はぁーいっ!」

校庭にて、ワン・タンメンの指導の下、生徒達はダンスの練習を楽しそうに励んでいる。

その光景をフェンス越しに微笑みを浮かべながら見つめるマァム。

「ウフフ…。みんな楽しそう。

…?

あれがピコラ君かな?

ウフフ、一番張り切っちゃって!

ホント、いい先生が来てくれて良かったわね、パイ。」

とそこに背後から声が掛かる。

「おや、これはマァム王女?

またお会いしましたなあ?」

マァムは振り向き、溜め息をつく。

「ハンサムさん、またおサボり?

トロールはいいの?」

「いやいや、王女様こそいつも護衛も付けずに無用心な…。

どうです?ボクがボディーガードを買って出ますが…?」

「結構です!

自分の身は自分で守れます!

…それに、あたしが危機に陥る程の強敵が現れたとしたら、あなたに敵う筈ないでしょう?」

ハンサムはニヤッと笑い

「フフッ、人は見かけによりませんよ?」

「…?

すごい自信ね?

じゃあ勝手にすれば?

それでダンディー隊長に怒られてもあたし知らないからね。」

ハンサムはニヤニヤしながら校庭に目をやる。

すると表情が突然変わった。

「おおっ!?

あいつは!?

ギーガ人じゃねぇか!?」

「…ええ、そうよ。

パイ達のクラスの教員実習生なんですって。」

「ええっ!?ギーガ人が!?

そいつはあまりに危険じゃないですか?

パイちゃんが危険ですよ?」

「まさか。」

マァムはやれやれという表情で溜め息をついた。

〜つづく〜