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【参加報告】第7回「知」の試み研究会

昨日は、16時3分から19時8分までからTKPガーデンシティPREMIUM大阪駅前において、サントリー文化財団が主催する第7回「知」の試み研究会(山崎塾)が開催されました。

今回は、菅原裕輝さん(大阪大学)と赤澤真理さん(岩手県立大学盛岡短期大学部)の2名が発表されました。論題は、菅原さんが「科学実践の理論化における文脈的転回」、赤澤さんが「王朝文化と寝殿造――宮廷女房日記のなかの位置関係とその変容――」でした。

菅原さんは近年の人文・社会科学において、身体と感情に着目することで生まれた情動的転回(the affective turn)が生じ、科学哲学の分野においては21世紀に入ると従来の論理実証主義に代わって新メカニズム主義(the New Mechanism)が登場、「抽象から具体へ」という科学哲学の転回が発生したことを学説史的に概観した後、科学者の規範(norm)や姿勢(stance)に着目して分野間の比較を行い、メカニズム概念は科学分野に応じて内容を緩やかに変質させていることを検証するという自身の取り組みを報告しました。

また、赤澤さんは室町時代から江戸時代までの各時代の『源氏物語絵巻』に描かれた寝殿造の様子を通して当時の人々の価値観を明らかにするとともに、平安時代の宮廷において女主人に使えていた女房たちが御簾の内側から着物を廊下に広げて出す打出を手掛かりとし、女性にとっては重要な自己演出の手段となる打出が男性にとっては無関心ないし非難の対象になっていることを平安時代の文献に基づいて実証的に検討し、平安時代の王朝文化は各時代に受容され、各時代の新しい文化を創出するとともに時代の価値観を表出することを示しました。

各発表者に対して私が用意した主な質問は、以下の通りでした。

(1)菅原裕輝さん

・「文脈的」とは「文脈に依存する」の意味か?

・「メカニズム」は日本語ではどのように表現さるか?

・「主観」と「客観」は何によって「主観」と「客観」であると判断されるのか?

(2)赤澤真理さん

・女性の地位の変化と住宅空間の変化の間には何らかの関連があったのか?

・描かれた絵巻における女房の室の位置と方向ないし方角の間に関係があるのか?

院政期から平家期に女房の装束が装飾になった社会的ないし文化的な背景はあるのか?

なお、「知」の試み研究会は今回で終了するため、最後に塾長である山崎正和先生から、塾生であるわれわれ参加者に対して「どんなに穴を深く掘っても穴の中に閉じ籠らない」、「一般社会に向けて発信を続けるなら「期待されない101名」となるが、学問を通じて自己表現する者は一般社会から期待されないゆえにこそ自ら身を乗り出してもらいたい」という言葉が送られました。